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ハンドヘルドコンピュータの名機「HPN含LH」の生産中止を受け、それを凌ぐマシンを自分たちでつくろうという目的でさまざまな人々が集まり、オープンソースの精神にもとづくハードの開発・製造を目指した「モルフィーワン」のプロジェクト、オープンソース関連の論文を多数手掛ける翻訳家の山形浩生さんが呼びかけ、古今東西のさまざまな作品を新たに翻訳し直して無償で公開する「プロジェクト杉田玄白」、著作権切れの文学作品などをデジタルテキスト化して公開するネット上の公共図書館「青空文庫」といった試みがそれにあたる。
また、オープンソースとは違うが、いわゆる「ユーザー」が積極的にかかわることで新しいタイプのモノづくりを目指そうという動きも出てきた。
エレファントデザインというプロダクションが始めた「空想生活」は、欲しいデザインの家電やインテリアなどをメーカーに持ち掛けて商品化してもらおうという、ユーザー主導型のデザインプロジェクトだ。
空想生活のウェブサイトでは、エレファントデザインのデザイナーが設計した家電品のオンラインカタログがあり、サイトを訪れた人はそこに欲しいモノがあれば「仮予約」をする。
予約者が一定数まで集まれば、製造メーカーに商品化を依頼し、その製品を入手するユーザー巻き込み型のデザインプロジェクトを展開する「空想生活」のサイトというわけだ。
これとは別にサイトに来た人たちがみんなで議論しあいながら欲しい商品を企画・デザインする場も設けられ、多くの人のアイディアや意見を取り入れながら、全体をデザイナーがまとめ上げていく。
このように、多数の人々のインタラクション(かかわりあい)によって生み出される、コミュニティを基盤とした協同的なプロジェクトをデザインしていくことも、情報のデザインにとっては大きなチャレンジとなるだろう。
なぜなら、異なる専門領域をもった人々が寄り集まり、ある特定の目的をもった企てをなしとげようとする時、情報の共有やコミュニケーションはプロジェクトを効果的に進めるためのきわめて重要なファクタ1になるからだ。
互いのバックグラウンドが異なり、問題意識も必ずしも最初から共通しているわけではない多くの人々をまとめ上げ、彼らのもつポテンシャル(潜在能力)を引き出し、コーディネートしていくこと。
それはいままで、プロジェクト・マネジメントに代表される経営管理や組織運営の手法としてもっぱら語られてきた。
しかし、たとえそれが企業内のものであれ、もっと緩やかに多数の人々が協働するものであれ、プロジェクトを進める際のコアになるのは、情報共有とコミュニケーションという、この本で語ってきた情報のデザインが最も力を発揮する部分だ。
たとえば、どんなプロジェクトでも、まずは達成すべき目的をハッキリとそれに携わる人々にしめすことが肝心だろう。
そこから始まって、プロジェクトの進行具合(一般的なものとしては、企画立案、基本設計、詳細設計、調達開発、導入運用、といった各段階に分かれる)のそれぞれで、膨大な情報がやり取りされることになる。
これらのコミュニケーションの流れをスムーズにし、多様な知恵を結集してプロジェクトを成功に導くためには、情報をわかりやすい「かたち」にするデザインの発想や方法論が大いに役立つことになるだろう。
つまり、情報デザインは、プロジェクトを効果的にデザインしていく「メタ(=超)デザイン」の有効な武器となるわけだ。
ユーザーを巻き込んだ情報デザインプロジェクトのアウトプット(成果物)とともに、プロジェクトの進め方自体もすぐれた情報デザインを実現した事例が、ヨーロッパの家電メーカー最大手フィリップスのデザイン部門が手掛けた「リビングメモリー」というプロジェクト。
これは、地域コミュニティの情報環境を補完するための提案で、デザインの初期段階からユーザーである地域住民の意見を大幅に取り入れたのが特徴といえる。
このプロジェクトは、EU(欧州連合)の「知的情報インターフェイス」研究のひとつとして資金提供を受けて実施されたもので、イギリス・スコットランドのエディンバラ市内のある街区に、家庭や公共施設向けのマルチメディア型のコミュニケーション端末のシステムを導入する、というのが目標だった。
彼らが立てた目標は、「地域社会に生活する人々が、それぞれの知識や経験を共有する可能性を提供し、それを支える新しいツールの開発」であり、その開発プロセスの最初の段階から住民を巻き込み、社会科学者や情報エンジニア、デザイナーといったさまざまな専門分野に属する人々が協同でーそれこそ異分野を横断するコミュニティとしてープロジェクトを進めた。
具体的には、(1)コミュニティの理解(2)新しいインターフェイスの提案(3)実際のデザインスタディというプロセスで作業が進められ、特に(1)の部分で住民の人たちの意見がかなり反映された。
最初に彼らが行ったのは、「概念モデル」づくりだ。
地域コミュニティの存在を、いろいろな人々の間で共有されている一種の「データベース」に見立て、その土地に住む人々だからこそもっている豊富なローカルの情報を蓄積したり、それを適切なかたちで交換できることが、地域における情報環境の大きな特徴である、と規定した。
そのうえで、地域に住む人々が、情報をどんな「広がり」(関係性)のなかで理解したり活用しようとしているのか、あるいは、情報を欲しいと思った人が、情報をもっている人とどんな風に出会って情報に辿り着くのか、といった人々の活動を実際に観察・分析して、デザインの方向性を定めていった。
そして、地域コミュニティのなかに四つの「結節点」になるサイトとして「学校」「病院」「ショッピングセンター」「パブ」(ここがいかにもイギリスらしい)Iを設定し、それぞれに合った、情報交換のための「モデル」をつくった。
これに加えて、実際に人々がこのシステムによってどう情報をやり取りしていくことになるのか、という「ネットワーク・シナリオ」というものをつくっている。
これは、あたかも映画の脚本のように、複数の人々の異なる視点が交差する物語として組み立てられ、それにもとづいて実際のデザインスタディが進められたという。
リビングメモリーのプロジェクト・デザインが秀逸だと思われるのは、次のようなポイントをおさえているからだ。
「地域にとって、最も豊かな情報資源は、そこに住んでいる人々自身にある」ということ。
「地域には、情報活動の核になる結節点がいくつか既に存在している」こと。
「人が情報(=をもっている人)にアクセスするには、それ相応の物語(時間的な順序や構造)がある」こと。
これらを踏まえて、コミュニティの人々の活動や意見を尊重し、情報技術を使ってそれを拡張するという姿勢は、かつて日本の各地で官庁主導で行われていた「ニューメディア」「地域情報化」のプロジェクトとは対照的だ。
一九八〇年代なかばのニューメディア・ブームからバブル経済のころまで、全国のあちこちでキャプテンシステムやケーブルテレビの半官半民会社が作られ、「地域に密着した情報提供」という名目での情報化投資が行われた。
それらの大部分は、はっきりいって失敗だった。
理由はいうまでもない。
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このように、多数の人々のインタラクション(かかわりあい)によって生み出される、コミュニティを基盤とした協同的なプロジェクトをデザインしていくことも、情報のデザインにとっては大きなチャレンジとなるだろう。
なぜなら、異なる専門領域をもった人々が寄り集まり、ある特定の目的をもった企てをなしとげようとする時、情報の共有やコミュニケーションはプロジェクトを効果的に進めるためのきわめて重要なファクタ1になるからだ。
互いのバックグラウンドが異なり、問題意識も必ずしも最初から共通しているわけではない多くの人々をまとめ上げ、彼らのもつポテンシャル(潜在能力)を引き出し、コーディネートしていくこと。
それはいままで、プロジェクト・マネジメントに代表される経営管理や組織運営の手法としてもっぱら語られてきた。
しかし、たとえそれが企業内のものであれ、もっと緩やかに多数の人々が協働するものであれ、プロジェクトを進める際のコアになるのは、情報共有とコミュニケーションという、この本で語ってきた情報のデザインが最も力を発揮する部分だ。
たとえば、どんなプロジェクトでも、まずは達成すべき目的をハッキリとそれに携わる人々にしめすことが肝心だろう。
そこから始まって、プロジェクトの進行具合(一般的なものとしては、企画立案、基本設計、詳細設計、調達開発、導入運用、といった各段階に分かれる)のそれぞれで、膨大な情報がやり取りされることになる。
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つまり、情報デザインは、プロジェクトを効果的にデザインしていく「メタ(=超)デザイン」の有効な武器となるわけだ。
ユーザーを巻き込んだ情報デザインプロジェクトのアウトプット(成果物)とともに、プロジェクトの進め方自体もすぐれた情報デザインを実現した事例が、ヨーロッパの家電メーカー最大手フィリップスのデザイン部門が手掛けた「リビングメモリー」というプロジェクト。
これは、地域コミュニティの情報環境を補完するための提案で、デザインの初期段階からユーザーである地域住民の意見を大幅に取り入れたのが特徴といえる。
このプロジェクトは、EU(欧州連合)の「知的情報インターフェイス」研究のひとつとして資金提供を受けて実施されたもので、イギリス・スコットランドのエディンバラ市内のある街区に、家庭や公共施設向けのマルチメディア型のコミュニケーション端末のシステムを導入する、というのが目標だった。
彼らが立てた目標は、「地域社会に生活する人々が、それぞれの知識や経験を共有する可能性を提供し、それを支える新しいツールの開発」であり、その開発プロセスの最初の段階から住民を巻き込み、社会科学者や情報エンジニア、デザイナーといったさまざまな専門分野に属する人々が協同でーそれこそ異分野を横断するコミュニティとしてープロジェクトを進めた。
具体的には、(1)コミュニティの理解(2)新しいインターフェイスの提案(3)実際のデザインスタディというプロセスで作業が進められ、特に(1)の部分で住民の人たちの意見がかなり反映された。
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そのうえで、地域に住む人々が、情報をどんな「広がり」(関係性)のなかで理解したり活用しようとしているのか、あるいは、情報を欲しいと思った人が、情報をもっている人とどんな風に出会って情報に辿り着くのか、といった人々の活動を実際に観察・分析して、デザインの方向性を定めていった。
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これに加えて、実際に人々がこのシステムによってどう情報をやり取りしていくことになるのか、という「ネットワーク・シナリオ」というものをつくっている。
これは、あたかも映画の脚本のように、複数の人々の異なる視点が交差する物語として組み立てられ、それにもとづいて実際のデザインスタディが進められたという。
リビングメモリーのプロジェクト・デザインが秀逸だと思われるのは、次のようなポイントをおさえているからだ。
「地域にとって、最も豊かな情報資源は、そこに住んでいる人々自身にある」ということ。
「地域には、情報活動の核になる結節点がいくつか既に存在している」こと。
「人が情報(=をもっている人)にアクセスするには、それ相応の物語(時間的な順序や構造)がある」こと。
これらを踏まえて、コミュニティの人々の活動や意見を尊重し、情報技術を使ってそれを拡張するという姿勢は、かつて日本の各地で官庁主導で行われていた「ニューメディア」「地域情報化」のプロジェクトとは対照的だ。
一九八〇年代なかばのニューメディア・ブームからバブル経済のころまで、全国のあちこちでキャプテンシステムやケーブルテレビの半官半民会社が作られ、「地域に密着した情報提供」という名目での情報化投資が行われた。
それらの大部分は、はっきりいって失敗だった。
理由はいうまでもない。
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